六花

ほんわか？です。
何もかも？白いです。

“？”いらないですか？（笑）

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口の中に含んだ白い結晶は
冷たくて何の味もしないはずなのに、暖かくて、甘かった。



その日は朝から冷たい雨が降っていた。
今週に入ってとても寒い日が続いている。
ただでさえその気候で外に出るのが億劫になってしまうのに、
おまけの雨。
何だかなぁ…と少し思う。

寒さは別にいい。でも、
雨は好きじゃない。
いろんなことを洗い流してくれる、なんて
センチメンタリズムなことは決してないから。
ただしっとり降っている雨を見ていると
そんな気分になるのは少しわかる気がするけれど…。
どちらかといえば外に出ている方が好きだから、
動きが取りづらい雨は、やっぱり好きじゃない。
ルルーシュに言わせると
「日本人なのに“趣”がない」
って呆れた顔だけど、雨に関してそう思わなくても、
他の事では風情を楽しんだりすることあるんだけどな。


雨はお昼には上がっていたのに、下校時刻間際に雪が降ってきた。
最後の授業の最中に降りだした雪に教室中がざわざわと楽しそうだった。
東京に雪が降ることは珍しいから、みんな嬉しいのかも。
途端に僕の気持ちも浮上する。
雨は好きじゃなくても、雪は好きだ。
いくら空気中で埃を含んで落ちてきていようとも
降る情景は綺麗だと思うから。

放課後、生徒会のお使いを言い渡されて
僕の横を歩くルルーシュは、無表情だ。
ジャンケンに負けたから悔しいのもあって、
「だいたいどうしてこんな日に買出しに行く必要があるんだ」
とかなんとか、色々と不平不満をまくし立ててたけど、
最後にはしょうがないと諦めたみたいだ。
僕はジャンケンには勝ったけど、
ルルーシュを一人で雪の中、買い物に行かせるのは
危なげだったから、代わりに行くよと提案したら、
一緒に行ってきなさいと会長命令が下った。
ルルーシュは「スザク、御前は馬鹿だ」
そう言っても、ついてこなくていいとは言わなかった。
一緒に居たいと思ってくれてるのかなと僕の気持ちはまた浮上した。

無表情のまま、ルルーシュは黙々と歩いている。
きっとまだ頭の中で不満を並べてるのかもしれない。
そんなことを思って、俯いて少し笑ったらルルーシュの手が見えた。
真っ赤だ。
真っ白な手だから、余計に目立つ。
寒そうだ…。

そうだ、いいことがある。

「ルルーシュ。手を繋ごう」
迷わず言った僕にルルーシュは瞬時にこちらに顔を向けて
「馬鹿か、御前は」
と、本日2度目の馬鹿。
「ほら。ルルーシュの手、真っ赤だし、寒いでしょ？」
僕は笑顔でそういうと、ルルーシュの手を勝手に握った。

「ば、馬鹿、止めろ。高校生の男二人がこんな公道で手を繋ぐなんて
　恥ずかしいと思わないのか？御前は！」
「別に恥ずかしいと思わないし、
　ルルーシュの綺麗な白い手がしもやけとかになる方が
　僕は断然嫌だよ」
「は？これぐらいで、しもやけになんかになるはずがないだろう」
「ルルーシュ、甘くみちゃだめだよ。
　それに、冬は乾燥してて少し油断するとカサカサになるんだし、
　ルルーシュの綺麗な白い手がそうなるのも僕は嫌だよ」

ルルーシュは暫く抵抗していたけど、
聞く耳を持たずに、ぎゅっと手を握ったまま足を進める僕に
これ以上何を言っても無駄だって判断したのか、呆れ顔をした後、
少し俯き加減に恥ずかしそうな顔しながら黙って歩き始めた。

うまくいったみたいだ。
こんな事でもない限り手を繋いで歩くことなんてできないし、
ルルーシュの手も暖められるし、一石二鳥ってこの事だ。
そして、払い除けられる手を結局そのままにしてくれてることに
僕の気持ちがまた浮上した。


帰りは荷物を全部片手に持って、
ルルーシュの手を握ったまま僕のポケットにお招きしよう。
荷物を持つ手が少しくらい痺れたって、そのくらい平気だ。

雪は積もることはなく、地面に落ちては道の色を変える。
積もればいいのに…。
そうしたら、まっさらな雪の絨毯に足跡を残して歩こう。
時間が経てば消えてしまうけれど、それでもいい。
並んだ二つの足跡を振り返って、笑いながら、ゆっくり二人で歩こう。