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-恋なんて言葉じゃ足りない-
◇ ◇ ◇
トシマの空は今日も曇り。
日の光は雲に覆われていて見えそうにないが、
雨が降る前に出る黒い雲はなく、明るい。
気温も寒くもなく暑くもなく、春や秋と言われる季節のような気候だ。
散歩をするにはいい日だろう。
今、アキラは本当に散歩をしていた。
アキラに散歩を楽しむという渋い趣味はなく、
謂わば強制的にさせられている。
目の前を歩く処刑人、グンジによって。
自分で楽に動けるようになったアキラを、グンジは連れて歩くようになった。
イグラの監視、死体の回収、時々あるアルビトロの指示によるおつかい、
それらを365日毎日行うのがグンジたち処刑人の仕事だ。
そう、アキラはそれに付き合わされているのだった。
嫌だと拒否しても、グンジはアキラを軽々と担ぎ上げ歩き出す。
「タマは散歩するもんだ」とグンジは言い、
「そりゃあポチだろ」とキリヲが横から言う。
二人の何かが抜けた会話を遮るように
放せとアキラが叫んでも、それを聞く耳をグンジが持っているわけはなく、
キリヲとの不毛なやり取りを繰り返しながらグンジは足を進めるの止めない。
取り付く島がないってこういう事か?
結局最後には「自分で歩くから…」と諦めて
こうやって後をついていくほかは、アキラには残されておらず、
今日も荷物のようにグンジの肩に乗せられて部屋を出たアキラだった。
こんな風にグンジに付き合うようになって、
アキラは色々とわかったことがある。
人間の範疇を超えた処刑人という
新しいカテゴリーに属するグンジだが、仕事はきちんとするということ。
日頃から反抗する態度言動をとっているが、
それでも雇い主であるアルビトロの指示を
文句を言いつつもそれを遂行する。
面倒だと言いながらも、敗者の亡骸を回収していく。
言いがかりをつけては違反者でない者を殺してしまうが、
そのいい加減な所と兇暴、狂暴、強暴な所は無視できないが、
処刑人だからと目を瞑れば、至極真面目、だということ。
そして、マトモからは随分ズレた頭をしているが、
グンジは一概に頭が悪いわけではないこと。
部屋でアキラの持っているダガーナイフを見ながら、
グンジはアキラにこんな話をした。
『ナイフナイフっていうけどよ、ナイフっつーのは、
武器とかじゃねぇ、あー、コックが使うようなのをナイフっつーんだよ。
ま、だからってどうしたって、他はどう呼ぶんだって意味わかんねぇから
どうでもいいんだけど。な、タマ、コレなんつーか知ってっか?
お、知ってんじゃん。そ、ダガーっつーんだけど、これくらいの
みじけー両刃で刺すとか投げるのにイイ感じなヤツを
全部ダガーっつーからホントいい加減だよな~。
コレのおもしれートコは、みじけーし急所狙わねぇと
あんま致命傷とかになんねぇから、ジワジワ楽しめるトコだな。
同じよーなヤツで、マンゴーシュつーのがあって、
左手で持つからマンゴーシュって言うんだとさ~。
けど、・・・んあ~・・レ、レ・・なんつったっけ?
・・ま、とりあえずほっせー剣と一緒に使って、
マンゴーシュで相手の武器を受けながら戦うんだと。両刀使いだな。
しちめんどくせーよなぁ、これ(鉤爪)一つでどっちもできるのによ~。
シキティー受けんのなんかすっげーおもしれーよ?
タマ、シキティーに会ったことあっか?今度遊びに行こうぜ~・・・・』
まさかグンジから武器について
講義を受けることがあるとは思いもしなかった。
グンジにどこかで習ったのかと尋ねると、
収容所にいた頃に面白そうだったから何かで読んだ
という答えが返ってきた。
グンジが本を読む。このグンジの姿を目の前にありえない話だった。
そしてそれを記憶していることが一番の驚きだった。
人を殺すことが愉しい、
それを除けばグンジはいたって普通…なのだということ。
その一つが大きく人として間違っているのだけれど。
アキラは人に無関心だった。
誰かを知ろうと思ったことがない。
他人が何を考え何を想っているのか考えたことがなかった。
だから自分の気持ちを知ってもらおうともしたことがなかった。
自分の気持ちでさえよくよく考えたこともなかった。
側にいると勝手に知っていく、わかっていくグンジの事、
それを不快に思うどころか面白いと思っている自分がいること。
何故そう思うかはまだ判らない。
そしてグンジの変化の理由も、自分がグンジから逃げない理由も。
それが判ればグンジから立ち去れるというのに…面倒だ。
グンジと居る毎日が『当たり前』になってきていること、
それにはアキラは気が付いていなかったが。
◇ ◆ ◇
「タァマァ~」
後ろから声をかけてくるグンジを無視して、アキラは道を進んでいった。
グンジが言う生ゴミを拾った時点で
『城』に一旦戻る事がわかっているので、
アキラは別にグンジの後ろをついて行かなくてもいいのだ。
けっして後ろを振り返らないアキラに、
まるで拗ねたような声でグンジは声をかけ続けていた。
やがて飽きたのか、グンジは黙って片腕を後ろに回し、
宙を見ながら歩き出した。
何だよ、タマ。
せっかく散歩に連れてきてやってんのに、
ご主人様に感謝しろってんだよ…。
ちっとも嬉しそうな顔しねぇし。
ビトロが言ってた躾が足んねぇのか?…躾?それってどうやんだよ。
タマは飼ったことねぇからわかんね~。
ブツブツと考えていたグンジの目の端に何かが映った。
何だァ?
生ゴミから鉤爪を引き抜き、グンジは音も立てずにそちらに近づいて行った。
グンジの声が聞こえなくなり、そして居なくなったことにも気が付かず、
アキラは歩き続けていた。
かまうだけ面倒であることはわかりきっているし、
それにこうしてグンジに振り回されている自分にも苛立ってきていた。
正体不明の感情や想いなど、どうでもいいんじゃないのかと
そう思い始めた時、アキラの耳に聞いたことのある声が入ってきた。
「アキラッッ!!」
…誰だっただろうか。
知っている気がする、と振り向いた先に
青いツナギの青年が今にも泣きそうな顔をして立っていた。
「・・・ケ・・イ・スケ」
アキラの口からそう発せられたのを聞き、
ケイスケはアキラに向かって突進してきた。
勢いのままにケイスケはアキラを抱きしめる。
「・・アキラ、よかった。
あの男に連れて行かれたまま全然帰ってこないし、
リンと一緒にトシマ中探したけど見つからないし、
もう駄目かと思ったよ、あのままアキラに会えないのかと思った。
けどアキラは強いし、信じてたし、
リンも源泉さんも移動してるから見つからないかもしれない
って言ってくれて、けど1ヶ月も帰らないなら…とも言われて
怖くて、でもアキラは強いし、俺信じてたし・・・」
「ケイスケ・・・」
「あぁでもよかった。アキラよかった」
同じことを何度も繰り返し言っているのも気にせず、
ケイスケは喋り、アキラを強く抱きしめていた。
それにアキラは素直に嬉しいと思ったが、
締め付けるように抱きしめてくるケイスケに恥ずかしさを覚え、
その力の強さに苦しくなり、呟いた。
「ケイスケ・・苦しい・・・・」
ケイスケは自分がアキラを抱きしめていたことを
たった今気が付いたかのように慌ててアキラを解放した。
その顔は真っ赤に染まっている。
「ご、ごめん、アキラ」
「別にいい」
気まずそうに謝るケイスケにアキラは素っ気無く返した。
それでもまた謝ってくるケイスケにアキラは、
「もういい」と突き放したように言う。
相変わらずだ…。
目の前の幼馴染にそんな感想を持ち、気になっていることを尋ねた。
「あれから、何日経ってる?」
「え?・・ああ、3週間くらいかな」
「そうか」
そんなものか。
年単位とは考えなかったが、
アキラはもう少し長くグンジと一緒にいるような気がした。
動けるようになるまでアキラが顔を合わせるのはグンジだけだった。
だからなのか?
少し考えて、どうでもいいかとそれを隅に追いやり、
黙っているとケイスケが話しかけてきた。
「・・あ、あのさアキラ、リンも向こうにいるからいかない?」
「オマエ、ずっとリンと一緒にいるのか?」
「うん、一人じゃここは・・俺には無理だし、
たまに源泉さんとも居たりしてたよ」
「そうか、・・・・・、イグラやってるのか?」
「・・・・ううん。俺・・戦え・ないし・・」
「それでどうやって・・」
「リン・・がね・・、情けないけどリンに助けてもらってた・・・。
リンってすごいんだ、本当に。ああ見えて凄く強いんだ」
アキラにも見せてあげたかったよと
自分のことを誇るように喋るケイスケに、
本当に何も変わっていないんだな…とアキラは苦笑に近い表情を見せた。
ケイスケが喋り、アキラは黙ってごくたまに相槌を打つ。
以前の、もう一つのいつもの光景があった。
そこに急に大きな声が割り込んでくる。
「タマー、帰るぞ」
いつもの緩慢な声とは少し違うグンジの声だった。
声に振り向いたケイスケは処刑人-グンジを見て、
一気に顔から色がなくなり、恐怖で固まっている。
アキラはいつもとは僅かに様子の違うグンジに既視感を感じたが、
そこまで気にするものでもないだろうとグンジを見つめた。
久しぶりに目にする読めない無表情。
アキラに向けられることは最近なかった気がする。
グンジはアキラの前で、笑う、怒る、不貞腐れると
意外にたくさんの表情を見せた。
気が付くと確かによく無表情であるのだが、
それはきっとグンジの普段、グンジの顔なのだと理解した。
アキラ自身も、無表情で付き合いにくいと言われてきたのだ。
同じようなものなんだろう。
けれど、今のグンジには怒りなのかそれのようなものが混ざっていて…。
やはり気になるグンジの様子に、
アキラはいつしか、僅かだが眉間に皺を寄せていた。
また何かあったのだろうか。
グンジの言う猫が隠れてしまって機嫌が悪いのかもしれない。
グンジが変わってしまう要因をアキラはいつも察することができなかった。
聞けばいいのだが、グンジ自身も答えを持っていないような気がして、
いつも黙ってしまうのだ。
そうしていると、グンジがもう一度声をあげた。
「アキラッ」
初めて呼ばれた。
耳に入ってきた瞬間、それは体の隅々に吸い込まれ、
刻が止まった。
驚きの後に理解不能なものがアキラの中に広がる。
優しくて、痛くて、辛くて、…甘い。
戸惑うアキラを前に、同じ言葉がグンジの口から紡がれた。
途端に、アキラの足はグンジの許に勝手に進んでいく。
蜘蛛の糸に絡め取られて引き寄せられるようだった。
それでもそれは自然なことで…。
後ろでケイスケが「アキラ」と呼びかけていて、
その声、言葉には何も感じないのに。
どうしてしまったんだろうか…。
癪にさわるような、不可解な自分にアキラは溜息を一つ溢して、
グンジに引き摺られるようにしてケイスケから離れていった。
◆ ◆ ◆
目の端に止まった影は、面白くも何ともないただのラリったヤク中だった。
黒い影だったので、シキティーかも~と
久しぶりに遊べると少し期待していたグンジはへの字口をして、
いつもよりだらりと体を丸めた。
帰ろー。
……。
あれ?タマは?
パーカーの中を探る仕草を見せたが、
勿論、そんな所にタマが入るわけがない。
しょうがねぇなぁ。
グンジは、途中の生ゴミの肉に鉤爪を食い込ませ歩いていく。
お、タマはっけーん!
すぐにアキラを見つけたグンジは近寄っていこうとするが、
アキラの横には自分の知らない青いツナギの男が立っている。
イグラの参加者の顔など覚えたことがないので、
何度顔を合わせようともどれもこれも知らない男だが。
足を止めて見ていると、アキラが笑った。
……。
いつかのようにグンジの中に判らないものが広がっていく。
また気持ち悪さを感じたが、同時に怒りも感じていたグンジは、
そちらを優先させるようにする。
呼ぶとこちらを見たが、その顔には眉間に皺が寄っている。
・・んだよ。
気に食わない。
グンジの中に占める怒りの感情が膨れていく。
自分でも何故そうしたのかは判らない。
気が付くとグンジはアキラを呼んでいた。
アキラは何故か驚いた顔を見せた。
楽しいと思ったグンジはそれを繰り返してみる。
するとアキラが素直にこちらに寄ってきた。
おもしれー。
何かに満足したグンジは、アキラと肉を上機嫌で引き摺って歩きだした。
またもや…(以下省略)いいんです、グンジのらぶは、恋なんて言葉で片付けられるものではないですから!(めっちゃ言い訳)ホントはちょっと別のことを書こうとしていたんですが、否これグンアキ文だし…と思い変更しました。しかしながら、相変わらずグンジは天才ですね。無意識に躾は完了しているという。ま、お互い判ってないですけど(笑)あ、グンジの言っている『ほっせー剣』はレイピアです。
02 | 2025/03 | 04 |
S | M | T | W | T | F | S |
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基本、ユルいです。
ギ/アス猛烈愛
ルルは右属性です。
女子相手でも右です。
言ってしまえば、総受です。
スザルル・シュナロイを取扱中です。
BLゲーム 咎狗の血
シキアキ&グンアキ愛
グンジが可愛くてしょうがありません。
グンアキを取扱中です。
drrr!!(現在アニメのみ)好きww
シズちゃんがすごくすごく好きです。
けれどdrrr!!はみんな好きだ!
静臨を取り扱い中です。
バンギャ?であったりします。
月と海の四弦さん好きです。
虹の歌うたい(ちっちゃいおっさん)が
世の中で一番好みです。
づか好き芝居好きです。
づかはどの組の大劇にも1回は出没します。