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-僕の世界に君を閉じ込めたい-
◇ ◇ ◇
有り得ない。あってはならない。
『城』に戻ってからもアキラは落ち着かなかった。
こんな自分はしらない。
考えれば考えるほど、
グンジに対しての不可解な自分の想いがはっきりと滲み出てくる。
だからといってどうしたというんだ。
普通じゃないのか?
無理矢理でも何でも一緒にいるのだ。
期間は短くともこんなに誰かと密接に一緒にいたのは初めて事で、
そうであるなら情がうつることだってあるだろう。
そうだ、きっとそうだ。
あの時の自分は酷く動揺していて。
……。
ケイスケ。
何があったんだろうか。
あの時、ケイスケは俺の首を絞めて…確実に、自分を殺そうとしていた。
何故。
何かしただろうか。
……。
青い髪の男から逃れてグンジに捕らえられ表に出るまで、
ケイスケとは会っていない。
偶然再会したのは少し前の事で、
その時のケイスケは自分の知っているケイスケだった。
再会を喜んでくれて、少しだけ話をしただけ。
それ以上もそれ以下も何もない。
他には…。
グンジが来て、自分を呼んだ。
初めて名前を呼ばれた。
不思議な気持ちになり、自分の行動に驚いたけれど、
そんなことはケイスケには関係ないことだ。
では何が…。
……。
そこでアキラは気付いた。
自分はケイスケの何を知っているんだろう。
同じ孤児院にいた。
その時から何故か俺の後を追いかけてきた。
初めは鬱陶しいと思ったが、無視してもくっついてくるケイスケを
そのうち邪険に思うことがなくなり、
知らない間に長い月日、四六時中ではないけれど側にいた。
……。
名前と顔、性格。
ちゃんと知っているのはそれくらいだということに愕然とする。
それを知っているだけで充分だったが、
ケイスケが何を考え、何を思っていたか、それをアキラは知らなかった。
知ろうとしたことが全くなかった。
誰に対してもそうだった、けれど…。
グンジを知っていく事、それに不快な思いを感じたことはない。
僅かにでもそれを楽しいと、嬉しいと思っている自分。
ならば、グンジより長く側にいたケイスケの事を知ることを
不快に思っただろうか。
何故自分はそうしてこなかったんだろうか。
何を楽しみ、何に悲しむ、たくさんのことを知れたはずなのに。
ケイスケに会わなければならない。
他の誰かであれば、どうでもよかった。
けれど、相手はケイスケで、
そしてそのケイスケは自分を殺そうとしていたのだ。
何がそうさせたのか、何を思ったのか。
聞かなければ判らない。
だから。
◆ ◆ ◆
「で、なんだってーの?」
「オマエさァ、何じーっと聞いてたんだァア?
アナから入れてまんまアナに垂れ流してんじゃねェよ・・」
扉を閉め、揃って歩き出した途端に隣から聞こえたその言葉に、
キリヲは少し呆れたような表情をしてグンジを見た。
最近、トシマの様子がおかしくなっていた。
人が死にすぎているのだ。
イグラでの殺人が起こるのは、この街では日常的な事で
さして気にするようなものではないが、
タグ取り目的ではない無差別な殺しが起きていた。
それも頻繁に、尋常ではない有様で。
--、
トシマには大量殺人をするバケモノがいる。
シキという名の殺人者が。
容赦も躊躇もなくシキは斬り捨てる、人を。
シキが扱うのは日本刀で、斬り口は一目で判る。
だが、集めた死体はそうと判るものと全く違ったものとの半々だった。
となると、死人をばら撒いている者が他にもいることになる。
現場を見ると酷いものだった。
グンジとキリヲは何ともないような顔をしていたが、
殺された者は、見境なく握り潰し、切り刻み、踏みつけられていた。
グンジに形容させると「ぐっちゃぐちゃ~のドッロドロ~♪」
間違ってはいない。
中にはそれに紛れて少し系統が違うものもあったが。
普通ではないそれを行っているのがライン使用者だということはわかる。
イグラの参加者の半数はラインを使っていて、
虱潰しにあたるのは無理だったが、
少し調べてみるとおかしなことが判明する。
運ばれた死体の中に不思議な数値を示すものがあった。
血液中のラインの濃度が、ヴィスキオが流しているものよりも濃いのだ。
--、
ラインの原料、原液をヴィスキオに持ち込んでくるのは、シキだった。
けれど、アルビトロもキリヲもこの事態を引き起こしているのが
シキだとは思わなかった。
そんなことをしても、シキには何のメリットもないからだ。
高濃度ラインをばら撒く者と死体をばら撒く者。
内戦がもうすぐ始まるかもしれないという時に面倒なことだと
アルビトロは溜息を吐きながら、早急に調べるようにと命令を下した。
「シキティーと遊んでくりゃいーの?」
「そりゃ、また今度だ。
オマエは、ラリったバカを捕まえりゃーいーんだよ」
「ソイツ、殺ってもいいの?」
「口聞けるくらいの体で連れて来いって言ってたろォ、ビト子がよォ」
「・・・めんどくせーなァ」
「めんどくせぇなら、糞ヒヨは猫とでも遊んでな」
「ッるせぇ・・・ヨボヨボハゲジジィ・・・・あ?」
のんびりと歩く二人が廊下を進むと、
グンジの部屋のドアが開いたままになっていた。
中を覗くと、そこにいるはずのアキラの姿がない。
「・・タマァ?」
「迷子かァア?・・・・それとも・・・他の駄犬に食われたのかもなァ」
「・・ッッ!!」
即座に踵を返して走っていくグンジの背中を見ながら、
キリヲは笑ったままの顔で口を開いた。
「おーおー、えらくご執心なこって・・・」
獣と兎が同じ巣穴に住めるわけねェのになァ。
あの兎に先に目をつけたのは自分だったのに、
先にグンジに喰われてしまった。
それで興味はなくしてしまったが、その後に意外な事が起こった。
あのグンジが、普通の猫なら食らってしまうため、
ご丁寧にタマと名前をつけて飼うと言い出し、
少しでもキリヲがちょっかいを出そうものなら、
牙を剥き出して威嚇するのだ。
飼われている嬢ちゃんの方も逃げようとはせずに大人しい。
…まったく長く生きてみるもんだなァとしみじみ思いながら、
キリヲは笑っていた。
◇ ◇ ◇
雨が降るのかもしれない。
湿った空気が体に纏わりつき、見上げる空は黒い雲に覆われている。
『城』から出てきたものの、アキラは途方に暮れていた。
トシマは狭いようで広い。
ケイスケと話すために外に出てきたが、
闇雲に歩いてもそう簡単に見つかるわけもなく、
アキラは路地の片隅で立ち止まった。
……。
情報を得られるような場所に行くべきか?
考えていると、グンジの言葉を思い出した。
グンジに付き合わされてトシマを回っている時に、
イグラの参加者たちが代わる代わる入っていく建物があったので、
あそこは何だと尋ねた事があった。
『中立地帯ってのがあんだよ、イグラにも。
バーとあのホテルと映画館、デカイのはそんくらいか・・?
ま、ちょこちょこ色んなトコがあって、猫が屯してんだ』
多数の人の出入りがある中立地帯なら何か情報を得られるかもしれない。
行ってみるか。
歩き出そうとしたが、地面に黒い染みができるのが見えて止まった。
それは次々に増えていき、降ってきた雨にアキラも濡れていく。
あまり動くと体力を消耗するだけだと判断したアキラは、
濡れるのを防ぐために近くにあった建物に入り込む。
見ていると雨は本格的になり、叩きつけるように降っている。
雨が当たる箇所から白く蒸気が上がりあたりは霞んでいた。
……。
グンジは黙っていなくなったアキラをどう思っているんだろうか。
アイツの事だ、追ってきているに違いない。
雨に濡れて、いるんだろうか。
一度グンジがびしょ濡れのまま部屋へ戻ってきたことがあった。
あまりに無残な姿で、部屋中に水を滴らせていた。
雨宿りしなかったのかと問えば「何で?風呂入んなくて済むじゃん」
そんな答えが返ってきた。
呆れながらも、グンジらしいと思った。
……。
ケイスケに会って、早くグンジの下に戻らなければ。
戻る?
また自分がわからなくなる。
戻る、グンジの下に帰ろうとしている。
……。
追いかけてきたグンジに連れ戻されるくらいなら、
自分で帰った方がマシ、それだけだ。
それだけ…。
◆ ◆ ◆
どこに消えた?
グンジはこれ以上のない速さで走っていた。
そうしている自分に、もう一人の自分が笑う。
何やってんだ、オマエ?
わかっていた。
ただの猫一匹ごときで必死になる自分。
今までなかったことだった。
何がどうしてそうさせているのか、何故そう思うのか、
グンジには判らなかった。
判らないけれど、勝手に体が動くのだ。
あの気持ちの悪い感覚。
それに耐えられなくなりそうで、アキラを何度切り刻もうとしたことか。
それでも自分の中から声がした。
違う、と。
何が違う?それの問いかけには一切応えないくせに、
グンジの抑制がきかなくなりそうな所で何度も何度も囁く。
違う、と。
衝動に、代替として他の猫を切り刻んだが、それでも治まらず、
横で寝ているアキラの首を締めたことがある。
反応しない抜け殻などいたぶる趣味はなかったのに。
力を入れると苦しそうに歪んでゆく顔。
その顔に興奮し、高揚した。
けれど、何か別の感情もグンジの中に広がる。
チクリと針を刺されたような痛みが。
何だこれ…。
ふと力を弱めてアキラを解放する。
眼下で目を開けないアキラの体に耳をよせると微かな息と心音が聞こえた。
グンジの中から痛みがなくなり、心の底から安心する。
……。
そして頭の隅から声がした。
ほら違うだろう、と。
アキラは俺のだ。他の誰にもやらない。
他のヤツに食われるくらいなら、俺が先に殺してやる。
◇ ■ ◇
幸いにも雨は先程よりもマシになった。
アキラは建物を出て、通りに出ようと歩き出す。
少し進んだその時、アキラの行く手から靴音が聞こえた。
アキラは警戒するが、黒い影は気にすることなくこちらに近づいてくる。
数メートルの距離を開けて立ち止まった男は、
アキラが探そうとしていたケイスケだった。
「ケイスケ・・・」
「よぉ・・・・・」
雨に全身が濡れていても、前に会った時感じた空気は変わりなく、
ケイスケはアキラの前に立っていた。
不適に笑っているケイスケに、アキラは無意識に自分の首に手をやった。
首を絞められたのは以前の出来事だというのに、
息苦しい圧迫感が迫ってくるようだった。
「ああ、苦しかっただろ?アキラ。
けど・・・・・、俺はその倍、苦しかったんだよ」
「・・・何・で・・・」
「何で、だって?あぁ、そりゃあ知らないだろうな、アキラ様はさ。
お高い所から見下ろしてたオマエにはわかんないだろうな。
今まで俺がどんな思いをしてきたかなんてさ」
「ッ、・・そんなことない」
卑下するようなセリフを淡々と低く笑って喋るケイスケに、
早鐘のような自分の鼓動を聞きながら、
アキラは吐き捨てるように言い、ケイスケを睨むように見た。
「その顔だよ。アキラのいつもの顔。
この前さ、怯えた顔見ただろ?
それ見たらさ、他にもアキラの色んな顔が見たくなってさ。
笑ってる顔や泣いてる顔でもいいんだけど、
この間見た苦しそうな顔が忘れられないんだ、俺。
アレ、・・・もう一度見せてよ」
「・・・どうして・・・・・」
ケイスケの体から瞳から澱んだ憎悪がアキラに向かってくる。
それがどうしてなのか理解できないアキラには、
そんな言葉しか出てこなかった。
その言葉を聞き、ケイスケは一瞬すっと目を細めてアキラを見たが、
すぐに嘲笑うような顔をした。
「アキラァ、俺はさ、オマエが好きだったよ」
出てきた言葉にアキラは目を瞠った。
ケイスケはアキラから目を離すことなく歩みを進めながら話を続ける。
「知らなかった・・っていう顔してる。ハハハ、当たり前だよな。
自分の事以外は“どうでもいい”アキラにはわからなかっただろうな。
そうやって思ってるくせに、俺を側に置いてさ。
アキラ、俺を人間扱いしたことあるか?
俺が何考えて何思ってたか気にしたことあるか?
・・・ないよな。暇潰しの何かとしか思ってなかっただろ?」
「違うッ!!」
「違わねぇよ。そうやって俺の事、物みたいに思ってたんだよ。
・・・・俺の見た事あるアキラの顔っていくつあるか知ってるか?
黙ってる顔、怒ってる顔、睨んでる顔、その3つしかなかったんだよ。
それなのにさ、他のヤツには簡単に笑ってみせるなんてされたらさ、
そうとしか思えないよ、なぁ?」
アキラにはケイスケが何を言っているのか理解できなかった。
ただ、自分のしてきたことがどれだけケイスケを傷つけてきたのか、
それだけは判った。
後悔という名の波がアキラは攫う。
何か言葉を紡ぎだそうにも、底にあった思いは違うけれど、
自分のしたことはケイスケの言った通りだった。
何も知ろうとしなかった自分。
言葉にしなければ、言葉にしてもらわなければ、
人の気持ちなど判りはしないのに。
……。
今、今が伝えなければならないその時じゃないのか?
意をけっしてアキラはもう一度ケイスケを見る。
うまく伝えられるだろうか。
そんな心配をしているうちに、先にケイスケが喋り始める。
「でも、もうそんなことどうでもいいんだよ。
アキラはさ・・・、苦しみまくって死ねばいいだけだから」
悪意の炎が瞳から滾る。
こちらに引火するようなそれに、
攫われそうになりながら必死に自分を繋ぎとめる。
「俺は、ケイスケを物だとか・・そんな風に思ったことはない」
「・・・そう。だから何?もういいんだって言っただろ?
・・・・・アキラァ、あの顔見せてくれよ」
何かの音が聞こえて視線を落とすとケイスケの手には
どこかで拾ったんだろう、ナイフが握られていた。
焦燥感に襲われながら、アキラはケイスケを睨む。
「ゆっくり、生きてるのが嫌になるくらい切り刻んでやるよ」
地を蹴る音が聞こえて、ケイスケがアキラに迫る。
このままではいけない。
後退しながらアキラは腰のホルダーからナイフを引き抜いて構える。
雨の中に金属の音が響き渡る。
受け止めたケイスケの力は思ったよりも強く、重い。
刃が重なる箇所から痺れてくるようだった。
ここの所、戦うことなどなかったせいで余計に思うのかもしれない。
一度引かれた刃がもう一度向かってくる。
アキラを凌駕しているケイスケの力に戸惑いと疑問を感じながら、
ケイスケの刃を受けとめる事しかできずに防戦に一方となる。
何度も繰り出されるケイスケの刃に、
ジリジリと襲ってくる痺れと焦燥で、このままでは…。
アキラは一瞬の隙を見計らい、両手でケイスケのナイフを薙ぎ払った。
間合いを取るべく、少し後ろに下がる。荒い息遣いが鼓膜に響く。
「そうこなくっちゃな」
ケイスケは狂気な笑いを浮かべて、ナイフを舐めた。
……。
どこかでみたことがある。
そう思えば、ケイスケのその姿はグンジに重なった。
アキラの体が僅かに震えた。
……。
グンジ…、俺を、殺すのか…。
動かなくなったアキラの側へケイスケが近寄ってくる。
殺気を漂わせ、ゆっくりと、それを愉しむかのように。
「・・・何?震えてるの?アキラァ・・・・」
アキラの耳にケイスケの声が聞こえた。
……。
違う、そうじゃない。
これはグンジじゃない。
入ってきた声に、目が覚めて顔を上げたアキラのすぐそこに
ケイスケのナイフが迫ってきていた。
降り続く雨は止まない。
アキラも、グンジも、ケイスケも、何だか乙女で、、、スミマセン。処刑人ズを書くのはホントに楽しいです。うっかりぽっかりキリグン文もできてしまいそうです(笑)しかも、妙に、火サス的なドラマの「つづく・・・」みたいな感じで、可笑しいやら恥ずかしいやら。ふぅ。。。
02 | 2025/03 | 04 |
S | M | T | W | T | F | S |
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1 | ||||||
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30 | 31 |
基本、ユルいです。
ギ/アス猛烈愛
ルルは右属性です。
女子相手でも右です。
言ってしまえば、総受です。
スザルル・シュナロイを取扱中です。
BLゲーム 咎狗の血
シキアキ&グンアキ愛
グンジが可愛くてしょうがありません。
グンアキを取扱中です。
drrr!!(現在アニメのみ)好きww
シズちゃんがすごくすごく好きです。
けれどdrrr!!はみんな好きだ!
静臨を取り扱い中です。
バンギャ?であったりします。
月と海の四弦さん好きです。
虹の歌うたい(ちっちゃいおっさん)が
世の中で一番好みです。
づか好き芝居好きです。
づかはどの組の大劇にも1回は出没します。